奇遇な事に、私の義母の父は塗師屋(ぬしや)だったそうです。
輪島の方から若狭へそして大阪〜京都と住み移り、輪島塗と若狭塗りと京仏具の技術を習得した、大変腕のいい塗師だったと聞いてます。
「漆の一滴は血の一滴と言ったものだ」と義母に聞かされていました。
特に国産の漆はその時代から希少で手に入らなかったそうですが、国内の使用割合が99%の中国産の漆でも他の塗料と比べて高価なものというのは変わりありません。
ちなみに、ビルマやタイ、インドなどの南方系の漆の木は日本の漆と比べて木が大きくゴム質で真っ黒だそうです。
日本の漆は採取したては茶褐色で、人工的に墨や鉄分を混合したものが黒漆で時間の経過によって変色する事もありますが、南方系の漆はいつまでも真っ黒で変色しないそうです。
中国の漆は、日本と気候風土が似ているため取れる漆も同じ様な物ではありますが、戦前には人工的に増量剤を加えたため、粗悪な品質となって日本に輸入されていた時期もあったそうです。
現在では法整備や体制が整えられ品質も安心できる様なのですが、検索して色々読んでいると、中国産の漆は腐敗臭がするものもあるそうです。
現地では腐敗臭が無かったので採取方法や流通に問題があるのではと書かれていました。
国産漆は品質が良いから高いというだけではなく、日本国内での漆の需要が極端に少なくなり、それだけで生計を立てられない事から高騰するんだと思います。
【国内で使用される漆の99%が中国産の漆】
現実には日本国内で使用される漆の99%が中国産の漆であり、それが悪いという訳ではありません。
また、わずか1トンほどの国産漆は高価すぎて買い手が付かず余っている状態だそうです。
なによりも、まずは漆という塗料のすばらしさを知ってもらうことが大事です。流通量が増えない限りはそれぞれの職人も育たず、技術が耐えてしまうからです。
一般の人は「高価」というイメージだけで漆の特性や背景なんて知りませんから、それをなんとかして伝え広げたいです。
有機溶剤を使わない、天然の塗料は子供からお年寄りまで幅広い層の方の体に優しい素材です。
【知ってほしい漆のすごい耐性】
漆は酸やアルカリに対しても耐性があり、
防水性、耐水性、防虫性、防腐性、抗菌性、さらには防錆性や電気の遮断性があります。
そして硬く強健です。
漆の採取は植樹から始まり、自然を守り育て自然の力を大切にする行程は環境面でも注目すべき塗料だと思います。
血の一滴と大切にされて来たすばらしい塗料の実力をもっと一般に知っていただきたいです。
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